手の届く範囲

池澤夏樹は、私の好きな作家の1人である。朝日新聞のコラム「終わりと始まり」は、毎回興味深く読ませてもらっている。6月7日のコラムで取り上げている原発再生可能エネルギーに関する池澤氏の熱き思いはくみ取ることは出来たが、導かれた結論については同意しがたい点がある。「原発の廃棄物を安全に保管する能力は人間にはない」と断じる一方で、「風力発電の公害問題などは、その気になれば手の届く範囲にある」と楽観的である。
「テクノロジーが社会をドラスティックに変えるところを見てきた」と自ら述べているように、科学の進歩に終わりはない。今回の事故で露呈した事は、今までの原子力工学が未熟であったという事であり、終焉を意味してはいない。
再生可能エネルギー開発の加速は、我々の夢を更に広げることであろうが、懸念される負の側面についても十分な検討が加えられるべきであろう。まだ池澤氏ほど私は楽観的ではない。
今日の一句「青嵐(あおあらし) 原発の火を 吹き消すか」