和食とは

和食が無形文化遺産として登録されたが、和食とは何をイメージしたら良いのだろうか。
農水省のホームページでは、「和食」には「多様で豊富な旬の食材や食品、栄養バランスの取れた食事構成、食事と年中行事や人生儀礼との密接な結びつきなどといった特徴がある」としている。
インターネットで検索していたら、熊倉功夫氏が今回登録対象となった「和食」とは「昭和30年ごろの日本の家庭料理」だとしているとの紹介があった。高級料亭の会席料理をイメージしている訳ではなさそうだ。
しかし、かつての日本人の食事は、飽食の現在と比べ、糖質の比率が高く栄養バランスが取れていたとは言い難い。そして現在の我々の食卓は、食材の多様化、電子レンジなどの調理技術の進歩と共にどんどん変化している。戦後の一時期の日本の家庭料理を日本の文化遺産とする価値があるとは思えない。
京都の割烹料理の森川裕之氏は、地元の食材を日本の風土の中で、素材の持つうまみを引き出すように調理した味を美味しいとする伝統的な料理を和食としている。彼の定義からすれば、当然「和食」がグローバル化することはなく、また最近のファミリーレストランや牛丼屋等のメニューとも異なる。今回のユネスコへの無形文化遺産への登録に向けて定義された和食とも異なる。
世界遺産登録をきっかけに「和食離れ」が見直されるのではと期待されていることから、和食の定義はどうであれ、日本米の消費拡大や日本からの農産物や食材の輸出拡大などビジネスに結びついた話題作りにユネスコを利用しようとしているに過ぎないようだ。
私としては、洋食や中華などあらゆる食材、食文化を取り込み日常化させていく貪欲さが「日本の食文化」と言えるように思う。従って、今さら我々の食生活を半世紀前へ回帰させる必要はない。そして文化遺産としての「和食」は、森川氏の言うように「排他的な郷土料理」として存在すればよかろう。
今日の一句「木枯らしに 冷たく冴える 冬の月」