『「健康に問題なし」は問題』

東京大学の学内での放射線測定結果について、「健康に問題なし」と説明をつけた事が「けしからん」とクレームが付けられて削除されたそうだ。
新聞記事によると、測定値は毎時0.25マイクロシーベルト前後の値だそうだ。1年間の被ばく量に直すと0.25x365x24=2、190マイクロシーベルト、即ち2.19ミリシーベルトとなる。この値が健康に影響あるかどうかは、臨床データの蓄積がある訳ではないだろうから、厳密には判らないということになる。しかし、このようなデータの測定は、この地に留まってもいいかどうかのリスクの判断基準に供する目的で行われている訳だから、専門家はデータの意味するところをコメントすべきである。一般人は、数値が知りたいのではなく、健康に問題ないのかどうか専門家の判断を仰ぎたいのである。日本の科学者や専門家は、往々にしてあいまいな表現を取りがちであるが、自らの責任を回避するべきではない。
ここで思い出すのが、内閣府原子力安全委員会の班目春樹委員長の「可能性はゼロではない」発言である。「限りなくゼロに近い」、「ほとんどゼロである」との意味であると釈明されていたが、この時には「曖昧で不用意な発言だ」、「はっきりと可能性はゼロと言うべきだ」として批判された。今回は逆である。クレームをつけた人は「健康に影響がある可能性はゼロではない」と言えば満足したのであろうか。
「一般からの問い合わせに応えるべく、端的な表現にした」との東大広報部の判断は正しい。自信を持って「健康に問題なし」とコメントすべきである。
今日の一句「青嵐は 健康被害 あるやなしや」